「………あのさ、最後にひとつだけいい?」

「なんだ?」


俺の腕を引っ張っていた北上さんが振り返ると、にこりと笑った。


俺はたぶん油断していたのかもしれない。

北上さんと一緒に居ても、何も思い出さないことにどこか安心していた。


そんなはずないのに。

昔の彼女と一緒にいて、何もないはずないのに。



まさかこの笑顔の後に、


「わたしたちの初デートの場所もね、実は遊園地だったんだよ」


こんな言葉が繋がるとは思っていなかった。


初、デート………?


『ほら、早く来ないと置いてくよー?』

『碧人って意外と絶叫系得意だよね』


ーーーっ。


なんだ、今の。


北上さんの言葉を聞いた瞬間、全く身に覚えのない記憶が頭の中に流れ込んできた。


今のは北上さん………?

なんで制服なんか着てるんだ……………。