「ねぇ碧人、わたし次はあれに乗りたいな!」

「あぁ、わかった」


随分と情けない返事だった。

北上さんが無理して盛り上げようとしてくれてるのに、俺って最低だな。

全部わかった上でわざと素っ気ない態度をとっているのだから。


「ふふっ、碧人ってわりと絶叫系得意だもんね」


北上さんが呟く内容も耳をスーッと抜けていき、なにひとつ聞けていない。

無理して作られた北上さんの笑顔を見ても尚、俺は罪悪感の1つも感じなかった。


まず第1に、誰かに作られた舞台で楽しめという方が無理な話だ。

来たくもない場所に半ば強引に連れて来られたあげく、誘った本人は風邪でダウン。


なんで俺が北上さんと2人で遊園地で遊ばなきゃいけないんだよ。

いくら昔の彼女でも今の俺には知り合ったばかりの知らない人。

言わば他人同然だ。


本当は今すぐにでも帰りたかった。

こんな抜け殻みたいな俺と一緒に遊んだところで、北上さんも楽しめるわけがない。


それなのに、なぜだろう。

楽しくもないのに、どうして北上さんは無理にでも笑っていられるんだろう。