なんだ、碧人くんは本当に全部失ったわけじゃないよ。

2人は今でも惹かれ合っている。

だったら元に戻してあげるのが幸せな形だよね?


「………碧人とまた恋人に戻りたいって思ってもいいのかな」


「はい!碧人くんの記憶が戻って、また2人が恋人同士になれるようわたしなんでも手伝います!」


元々碧人くんの記憶を戻してあげることがわたしの願いだったんだ。

記憶が戻れば2人はまた恋人になれる。同じことじゃない。

全力で手伝う以外の答えはないよね?


「ありがとう。また頑張ってみるよ」


わたしは選択肢を間違ってはいなかったと思う。

純粋に2人を……北上さんを応援したかったし、碧人くんには全てを思い出してほしかった。


それにね。


記憶を取り戻すことと引き換えに失う何かを想像することなんて、

今のわたしにはできなかったんだから。