「………え!?碧人くんの同級生!?」

「はい」


サラリと受け流してしまうところだったが、今かなり重要なことを言われたのだ。


碧人くんの中学の同級生。

つまり、記憶を失う前の碧人くんを知る人物。

地元に来ているんだからもしかしたら……とは思っていたけど、まさかこんなところで出会うなんて。


「えっと……じゃあ………その………」


こんな時なんて言えばいいんだろう。


この人なら、北上さんならきっと昔の碧人くんを知っているはず。

昔のことを聞かせてもらえれば何か記憶が戻るきっかけになるかもしれないのに。


喉の奥まで出掛かった声がそれ以上出てこない。


「………よかったらわたしの家に寄って行きませんか?すぐ近くなんです」

「へ……?」


北上さんが差した指の先には、ベージュ色の可愛らしい一軒家。

確かに5分も掛からないくらいすぐ目の前だ。

何も言わないわたしに気使ってくれたのかな……?


「いっ、行きます!」

「わー、ありがとうございます。じゃあ行きましょう」