溢れる涙を抑えきれない彼女を、わたしはただ見ていることしかできなかった。


白猫に引き寄せられてわたしたちはこの場にいる。

ただの飼い主さんかと思えば碧人くんの名前を知っていたり、泣いていたり、訳がわからない。


どうにか聞こうにも当の本人確認は泣いてばかりでそれ以上何も言わないし、碧人くんはぼーっとしていて何を考えているのかわからないし。


破られない沈黙にそろそろ耐えられなくなりそう。

それに、この人の右耳に見えた青色のピアス。


たぶんあれはーーーー。


「っ………いきなり泣き出してごめんなさい。久しぶりに会えたからびっくりしちゃって」


先に沈黙を破ったのは目の前に立つ女の人だった。


「わたし、北上瑠璃(きたがみるり)って言います。碧人……いえ、日野くんとは中学の同級生なんです」


目に溢れた涙を擦りながら、また穏やかに微笑んだ。

中学の同級生ってことは碧人くんの知り合いかぁ……。