「俺にもよくわからない。でも、なんだかあの場所が気になって……」


儚げる揺れる瞳にはいったい何が映っているんだろう。

あそこに行けばきっと何か進歩がある……?


碧人くんが「行きたい」と思った場所なら何かあるに違いない。

だったら答えはひとつ。


「きっとあの展望台になにか思い出があるんだよ!行ってみよう!」


もしかしたら碧人くんの記憶が戻るかもしれない。

今まで何もできなかったわたしが、ついに碧人くんの力になれる瞬間が来たのだと、嬉しくてたまらなかった。


「ほら、早く早く!」

「ちょっ、引っ張るなよ……!」


大きな碧人くんの手をしっかりと包んで、展望台目掛けて地面を蹴り上げた。

1秒でも早くあの場所に連れて行ってあげたい。

頭の中は碧人くんのことで溢れて、浮かれ気分に染まっている。

初めて握った碧人くんの手のひらはすごく温かいとか。

どこか懐かしくて、安心できるとか。そんな考えばかり。


空に浮かぶ太陽も、今日はわたしを明るく照らしてくれていた。

辿り着いた先に見える未来も、太陽のように眩しく輝かしいものだと、今は信じて疑わなかった。