「いいよ、気使わなくて。思い出すって自分で決めたし、お前が心配することじゃない」


空を仰ぎ見る碧人くんの瞳には、いったい何が映っているのだろう。

わたしには想像もつかない遠い記憶の後を追っているように見えた。


「そうだね。碧人くんなら大丈夫って信じてる」


知らない過去の記憶に触れることの不安や恐怖は、わたしにはわからない。


自分が自分じゃなくなってしまったり、生きることが辛くなる記憶だってあるかもしれない。


それでも前を向くと決めた碧人くんのためにも、わたしにしかできないことを全力でやる。

不安に押しつぶされてしまわないよう、支えてあげるんだ。


「それにしても俺が島出身だってことよく覚えてたな」

「“あの日”はわたしにとって特別だもん!忘れるわけないよ」

「ふーん」