もしも勇気が出たら君を抱きしめたい



「せーんーせーっ」

伊東がブンブンとバトンを振り回しながら、こっちに来る。

なんのことかわからず、僕はベンチに座ったままきょろきょろしていると、あっと言う間に伊東は目の前まで来た。


「先生立って」

「え?」

「え、じゃない!たって!走るで!」

「は?お題なん」

「いいから!早く!」


ぶつぶつ言う僕の手を思いっきり引っ張って伊東は走り出した。

気づかなかったが思ったよりも足が速い。


僕を引っ張ったままどんどん走って、係りの人のとろまで走る。


「お題はなんですか?」

体育委員の生徒に向かって、伊東は耳打ちした。

それを聞いた体育委員は僕をじっとみて、にやっと笑った。


「合格!」

「やった、先生いこっ」

「いや、だからお題なになん」

「いいから!早く!」


結局お題を教えてもらえないままアンカーにバトンをパスした。