けど、伊東はクラブでは全く弱いところは見せなかった。
九条の前で泣くときも、絶対に後輩には見られないようにしている。
プライドが高いのか、心配をかけたくないのか、おそらく半分半分なのだろう。
岡部たちもそれはよくわかっているらしく、三年生のコンクールに向けての話し合いのあとには、必ず準備室にいないようにしていた。
「もも先輩は、私たちがいたら泣けないから、九条先輩と二人にしてあげたいんです」
後輩にもここまでばれているのだから、みんなの前で泣いてもいいと僕は思うのだけど。伊東はそうは思えないらしい。