もしも勇気が出たら君を抱きしめたい



「・・そんな先生みたいなこと言うてほしいんちゃう」


僕に向けていったのか、独り言なのかわからないくらい小さい声で伊東が呟いた。

どうやら本当に何かあったらしい。そしてそれは、年上の彼氏に関係しているに違いなかった。


「伊東は、」


そこで少し間が空いた。


なんていうべきか、迷った。本心を言うべきか、先生であるべきか。

けど、顔をあげた伊東の目が、きれいごとなんて求めていなくて、どこかさみしそうで



「僕は伊東は魅力的な女性やと思うよ。誰にでも分け隔てなくやさしくできるし、後輩も伊東やからついていってるんよ。」


思わず口をついてでたのは、本音ときれいごとの真ん中みたいな答えだった。