「センパイ」




「‼︎」





後ろから低い声が小さく聞こえた





振り向かずにそのままの体勢で次の言葉を待っていると





ギシッ





椅子から立ち上がる音がし、こちらに足音が近づいてくる






そして、



「何……っっ⁉︎」



振り向こうと首を動かした瞬間、後ろからすっぽりと広い胸の中に収められた






「ちょっとせが…」



「センパイ


好き」




「……っ‼︎」







「好きなんだよ」





「いや…っ

ちょっ…知ってるよ」






「彰先輩なんて忘れろよ」





「はぁ?」






私の首筋に顔を埋め、小さく声を出す瀬上の腕を振りほどこうとしている間も






ドキッ




ドキッ






私の心臓の音はうるさすぎるくらいに鳴っている






「瀬上っ

はなし……うぇっ」






更に力を強められ、変な声まで出てしまう






「…なぁセンパイ」






「…けほっ

げほっ…な、何っ」






さすがに苦しくなってきた






チクッ





「いっ⁉︎」





瀬上が顔を埋めた場所から感じた小さな痛み






何をされたか理解するのに時間はいらなかった







「ちよっと‼︎何するのよっ‼︎」





恥ずかしさと怒りで真っ赤になっているであろう私は思わず大声で怒鳴ってしまった






そんな私の声が聞こえているのかいないのか







「……」






「瀬上?」






ゆっくりと私を自分の方に向かせ、再び正面から抱きしめる瀬上







…一体こいつはどうしてしまったんだろう







ドクッ




ドクッ







お互いの心臓の音が大きすぎてどっちがどっちの音なのか分からない







不思議にも瀬上から離れようと拒む自分はいなかった