クラシック

見守っとくから。
大人しくしとけるだけのご褒美をくれ、前払いで。



「…1日って、24時間?」

「そこは、ニュアンス汲んでいけよ美音。
大体でいいだろ」

「あ、あー…や、泊まるのかなと…思って。1日って」

「えっ?!むしろお前の方がやる気?!
よし、じゃあパジャマ持ってこいよ、バナナはおやつに入りません!」

「遠足?!」



ああ、コイツ。
本当にパジャマ持ってくるかも、明日。
…いや、そんならそれで大歓迎だけども。
出かける理由もお母さんへちゃんと嘘なく言えちゃうんだろうな。
あのお母さんの方が、むしろ訳知り顔で送り出してくれたりして。



容易に想像できて、ちょっと笑えた。
ほら、こんな風に明日が待ち遠しくて仕方ない感覚なんて。
お前とこうなるまで忘れてたよ、俺。







―――25日。
いよいよだ、クリスマス。



いつものように朝早くからの俺の我儘呼び出し。
にも関わらず、門扉を開ければそこに笑顔で佇んでいる美音がやっぱり可愛くて仕方ない。
ふわふわの髪の毛は緩くまとめ上げられているけれど、ところどころの後れ毛がこれまたふわふわで。



…よし。今日1個目はこれだな。



「パジャマ持って来たか?美音」

「えっ?!あれ本気だったの?!」

「…俺が本気じゃなかったことなんてあんのかよ」



う、と言葉に詰まる美音を、まあ駄目押しでイジメてもいいんだけど。
青少年に許されているナイトタイムぎりぎりまで粘ったとしても。
あと12~13時間ってとこだろ?



数字で思い描くと結構長く感じるんだけど。
美音と過ごす時間だと思うと物足りない。
24時間にも満たないんだし、些末な事態に綿密対応してるヒマはないんだ。

“腕枕”と“寝顔を見つめる”が消えたのは痛いけどな。



「ま、いいや。
じゃあ、今日はどんどんやってくからな?」

「…えー…。
奏成くんの“じゃあ”が怖くてたまりません…」

「だあーいじょうぶ!優しくするって!」



美音の手から小さなバッグを攫うと靴を脱ぎ上がるように促す。
チラ、と横目で盗み見ると、俺と色違いの例のマフラーで鼻まで隠そうとしていた。



「相変わらずやらしーな、妄想家 美音ー」

「…っ、やっ…!
やらしー、って言う人の方が…っ!」

「そうそう、俺はやらしーぞ」



開き直った、という美音の小さな呆れ声を背に俺は自分の部屋へと向かう。
階段をのぼりかけたところで、背後に感じていた気配がピタリと止まった。