クラシック




「はい」

「…何?」

「奏成くんの番よ?」

「…何の話?」



あ、ひどい。

しらばっくれた俺の答えはくすくす笑う美音の心地好い声音が攫っていく。



「だってもー、言えねえもん。
美音の感動的な告白の後で、俺 何も言えねえ」

「金メダリストですか」



呆れたように美音は深く長くため息した。
…え、何?怒った?



「…ズルイなあ、奏成くん。
聞かせて欲しかったのに」

「…俺のこと、見てたんだろーがよ、美音。
態度で分かんだろ、モロモロ」



それはそうなんだけど。
そうだとしても。

俺があんまりきつく抱きしめるもんだから美音の息は溺れそうになっている。
もうそれすらもこそばゆくて、美音の細い肩に俺は顎を埋めた。



「…じゃあ」

「ええっ?!出た、奏成くんの“じゃあ”!」

「…テメ」



首を竦めてクククと笑う美音はとても楽しそうでふわふわと温かくて。
その温もりは美音の内側からどんどんと溢れているように見えた。
…俺の贔屓目じゃ、ないと思う。
何枚かの布地が隔てているはずなのに、美音へと回した俺の腕も抱え込んでいる脚も同じような熱で火照っている。



…ヤバイかも、俺。
かと言って離れたくねえし。



「も1個。
クリスマスプレゼント、くれよ美音」



うん、と聴こえた。
間も空かず、弾むような笑い混じりの声音で。
つられて動いたふわふわの髪の毛の触り心地が好かった。



「何でも。
私に、出来ることなら。
私が、持ってるものなら。
全部、あげるよ」

「!…ま、ったお前は…っ!
青少年がうっかり勘違いするようなこと言ってんじゃねえよ!」



ん?なんて無垢な瞳で見上げてくるか?ここ!
好きだと想う熱の昂ぶりが下半身に連動してるのは、やっぱ俺が男だからか。
美音と、気持ちは重なっててもきっとそこのところは完全にすり合ってない。
美音のが幼い分、妄想だに及んでないっつーか。
そういう疼きはピアノを一心に弾くあの不乱さで昇華しきっているというか。
…俺の方が疾しすぎる…!



期待は、過度にしないけどさ。
ちょっとくらいは、しても良いか。
何たって明日は、クリスマス。
サンタさんは世界中の良い子へプレゼントを届けてくれるんだろ?



「明日、1日。
俺につき合って?美音。
勿論、ピアノの練習する時間は別だけど。
それ以外の時間、全部俺にくれ」



そうしたらコンクールまでの20日ちょい。
お前がピアノばあっか弾いてても、ピアノのことだけ考えてても。
黙って傍で聴いてるよ。
運動部のヤツらが試合前に見せる恐ろしいほどの集中力を、きっと美音も高めていくんだろ?