羨ましい、という形容詞はやっぱりそこに美音への未練があるからだろうか。
翔太の本音に触れたいようで触れたくない。
翔太に我慢を強いてしまうのかもしれないけど。
俺はこの心地好い友情も手離したくない。
…とかって。
これもエゴか。
「あんな風に、間違いなく想われてるのって、良いよ。
ちょっと無いよ、そりゃあエラソ王子の奏がデレて溶けていくわけだと。
納得できるよ」
「………」
「…ああ、いや」
俺が表情を決めかねているのを窺い見た翔太は、クツクツ笑ってまた俺を肩で小突く。
「相手が美音ちゃんだから、ってんじゃないよ?
誰からであろうと嬉しくてたまんないじゃん?真っ直ぐ自分だけを好きでいてくれるのがちゃんと分かるの、って。
変な踊り、舞いたくなんじゃん?」
「いや、舞わねえよ?」
ええー、舞ってよ!と素っ頓狂な声を上げて笑う翔太へ軽くケリを入れながら、翔太の言葉を反芻する。
“真っ直ぐ自分だけを好きでいてくれる”
うん、そうなんだと思う。
てか、そう。間違いない。
自惚れでも自意識過剰でもなく。
美音はちゃんと伝えてくれてる。
ずっと、って永続性に馴れない不安を抱いているとしても。
たどたどしくも美音なりの精一杯。
そこに打算も駆け引きも計算も無いから、素直な感情に揺さぶられるんだ。
「…そうやってさあ。
もらえてる気持ちには、返したくなるよね」
笑いはピタリと止み、途端に翔太の声は真剣みを帯びる。
その先に翔太の優しい言葉がどう続くのか。
薄ら感じられたけど遮りたくなかった。
「応えたくなるんだよ。
だから。
奏の気持ちはエゴでも上からでも自己満足でもないよ」
話くるっと回って結局よしよしと撫でられてる気がする。
いいヤツだな、と。
迷いなく思える友達がすぐ傍に居てくれる幸せへも、当たり前と思わずちゃんと感謝しようと思った。
こんな気持ち、きっと。
美音が気づかせてくれなければ一生知りえないままだった。
きちんと手にしておくこともないまま、いつの間にかするりと指の隙間から零してしまって。
いや、そうやって失ったことにすら気づかなかったのかもしれない。
「…美音ちゃんのことだもん。
応えてくれるんじゃない?奏の気持ちにさ」
だから当然、優勝だよ。
そう言い置いて翔太は、自分の分だけでなく俺のマグカップも手にし、キッチンへと姿を消す。
なんて楽観視。なんて根拠なし。
それでも、そうだな、と口をついて出た言葉は俺の頬を緩ませていく。
「あ、うわ!
翔太、悪いけど帰って?」
「んなっ?!なに急に?!
オレ今すっげー良い話してたよねっ?!
その超速のつれなさ加減は何なんだ!」
「美音、迎えに行く時間だから」
ひどいよひどいよかなちゃん、という恨めしい翔太の声を背に、俺は意気揚々とダウンジャケットへ袖を通す。
いつもより早い夕刻。
朝から働きづくめで疲れているだろう美音へ何をしてあげられるかと考えるにつけ顔は綻び、翔太のさらなる不評を買った。
翔太の本音に触れたいようで触れたくない。
翔太に我慢を強いてしまうのかもしれないけど。
俺はこの心地好い友情も手離したくない。
…とかって。
これもエゴか。
「あんな風に、間違いなく想われてるのって、良いよ。
ちょっと無いよ、そりゃあエラソ王子の奏がデレて溶けていくわけだと。
納得できるよ」
「………」
「…ああ、いや」
俺が表情を決めかねているのを窺い見た翔太は、クツクツ笑ってまた俺を肩で小突く。
「相手が美音ちゃんだから、ってんじゃないよ?
誰からであろうと嬉しくてたまんないじゃん?真っ直ぐ自分だけを好きでいてくれるのがちゃんと分かるの、って。
変な踊り、舞いたくなんじゃん?」
「いや、舞わねえよ?」
ええー、舞ってよ!と素っ頓狂な声を上げて笑う翔太へ軽くケリを入れながら、翔太の言葉を反芻する。
“真っ直ぐ自分だけを好きでいてくれる”
うん、そうなんだと思う。
てか、そう。間違いない。
自惚れでも自意識過剰でもなく。
美音はちゃんと伝えてくれてる。
ずっと、って永続性に馴れない不安を抱いているとしても。
たどたどしくも美音なりの精一杯。
そこに打算も駆け引きも計算も無いから、素直な感情に揺さぶられるんだ。
「…そうやってさあ。
もらえてる気持ちには、返したくなるよね」
笑いはピタリと止み、途端に翔太の声は真剣みを帯びる。
その先に翔太の優しい言葉がどう続くのか。
薄ら感じられたけど遮りたくなかった。
「応えたくなるんだよ。
だから。
奏の気持ちはエゴでも上からでも自己満足でもないよ」
話くるっと回って結局よしよしと撫でられてる気がする。
いいヤツだな、と。
迷いなく思える友達がすぐ傍に居てくれる幸せへも、当たり前と思わずちゃんと感謝しようと思った。
こんな気持ち、きっと。
美音が気づかせてくれなければ一生知りえないままだった。
きちんと手にしておくこともないまま、いつの間にかするりと指の隙間から零してしまって。
いや、そうやって失ったことにすら気づかなかったのかもしれない。
「…美音ちゃんのことだもん。
応えてくれるんじゃない?奏の気持ちにさ」
だから当然、優勝だよ。
そう言い置いて翔太は、自分の分だけでなく俺のマグカップも手にし、キッチンへと姿を消す。
なんて楽観視。なんて根拠なし。
それでも、そうだな、と口をついて出た言葉は俺の頬を緩ませていく。
「あ、うわ!
翔太、悪いけど帰って?」
「んなっ?!なに急に?!
オレ今すっげー良い話してたよねっ?!
その超速のつれなさ加減は何なんだ!」
「美音、迎えに行く時間だから」
ひどいよひどいよかなちゃん、という恨めしい翔太の声を背に、俺は意気揚々とダウンジャケットへ袖を通す。
いつもより早い夕刻。
朝から働きづくめで疲れているだろう美音へ何をしてあげられるかと考えるにつけ顔は綻び、翔太のさらなる不評を買った。
