そうして。
あの、と切り出した美音の表情があまりに申し訳なさそうで、もう何を言われても許す気でいた。
「…私、何も用意できてないの」
「何を?」
「クリスマス…の。プレゼント」
ああ、と俺は片方の口角を上げながら美音を見下ろした。
まあそりゃあ、そうだろ。
ここのところの美音は、ピアノにバイトに大抵 俺がベッタリくっついてたんだから、独りで買いに行く時間なんて無かっただろう。
ネットであっという間に注文されてても何だか物寂しいし。
いいんだよ、そんなの。
俺のプランに付いて来い、って。
「今からもらうし。気にすんな」
「…え、と。誰が…誰から?」
「俺が、美音から」
「………。
あ!一緒に、買いに行ってくれるの?」
「ブー」
何?何なの?
教えてと控え目にねだる美音が、答えを求めるあまり繋いだ手に腕まで近寄せてくる。
…お前、これ無意識?
怖ぇな、もう。また持って行かれんな、ごっそり。
秘密、と笑いを含んだ声で告げた俺は、目的地へと美音を連れて行く。
「か、奏成く…」
「…うん、美音。ブルブル震えんな。
目的地はそこじゃねえ」
一見、コンクリート打ちっぱなしの無機質な外観に似つかわしくない、艶めかしく妖しいピンクでライトアップされた看板から読みとれるのは、利用時間と金額と空室ってこと。
外の視線から逃げ隠れるような造りがもうやらしいというか、いやその気になってる2人なら煽られるんだろうけど。
あそこに着くまでにここ通らないといけないのが嫌だったんだ。
「…何?入ってみたい?それとも」
「…入ったこと、あるの?」
「あるか!このバカ!」
からかってんだか、からかわれてんだか分かんねえな。
どアホ、ともう一度 肘で美音を小突くと、小さく だって、と返された。
「相澤くんは…」
「テッメ、なんで呼び方戻ってんだ?
その先にスケコマシとかくっつけやがったらスカートめくってやる」
美音の唇はタコみたくちんまり突き出されてたから。
す、から始まる良からぬ言葉を口にしようとしていたらしい。
まったく。伊野の暴言はホイホイ信じやがって。
「…俺のこと、ずっと見てたんじゃねえのかよ、美音。
誰がいつ女子とイチャついてたんだ、っつーの」
「…コンビニに。
一緒に入って来る子は、毎回違ってた」
「…覚えてんじゃねえよ、んなもん。
生徒会のヤツとかだ、きっと」
吐き捨てるように言いながら情けなくなってきた。
…どんなとこ見られてんの、俺。
いや、断じてイチャついてねえし、つき合ってもいねえけど。
美音は一体どんな想いで、俺のそんな姿を眺めていたのか。
美音しか、もう。傍にいて欲しくないのに。
弾み浮かれていた気分は一気に鉛でも飲んだように重くなった。
「…信用、ないか?俺」
「そんなことないよ?
モテるんだから、仕方ない…」
「仕方なくねえよ。
諦めんな、もっと欲張れ」
手袋をはめていない俺達の手は、外側は真冬の北風にさらされ体温を奪われていく一方だけど。
繋いでいる指や内側は熱くてしっとりしている。
籠めた力に反応した美音が俺の顔を見上げてきた。
「…もっと、俺のこと欲しい、って。
欲張れよ、美音」
あの、と切り出した美音の表情があまりに申し訳なさそうで、もう何を言われても許す気でいた。
「…私、何も用意できてないの」
「何を?」
「クリスマス…の。プレゼント」
ああ、と俺は片方の口角を上げながら美音を見下ろした。
まあそりゃあ、そうだろ。
ここのところの美音は、ピアノにバイトに大抵 俺がベッタリくっついてたんだから、独りで買いに行く時間なんて無かっただろう。
ネットであっという間に注文されてても何だか物寂しいし。
いいんだよ、そんなの。
俺のプランに付いて来い、って。
「今からもらうし。気にすんな」
「…え、と。誰が…誰から?」
「俺が、美音から」
「………。
あ!一緒に、買いに行ってくれるの?」
「ブー」
何?何なの?
教えてと控え目にねだる美音が、答えを求めるあまり繋いだ手に腕まで近寄せてくる。
…お前、これ無意識?
怖ぇな、もう。また持って行かれんな、ごっそり。
秘密、と笑いを含んだ声で告げた俺は、目的地へと美音を連れて行く。
「か、奏成く…」
「…うん、美音。ブルブル震えんな。
目的地はそこじゃねえ」
一見、コンクリート打ちっぱなしの無機質な外観に似つかわしくない、艶めかしく妖しいピンクでライトアップされた看板から読みとれるのは、利用時間と金額と空室ってこと。
外の視線から逃げ隠れるような造りがもうやらしいというか、いやその気になってる2人なら煽られるんだろうけど。
あそこに着くまでにここ通らないといけないのが嫌だったんだ。
「…何?入ってみたい?それとも」
「…入ったこと、あるの?」
「あるか!このバカ!」
からかってんだか、からかわれてんだか分かんねえな。
どアホ、ともう一度 肘で美音を小突くと、小さく だって、と返された。
「相澤くんは…」
「テッメ、なんで呼び方戻ってんだ?
その先にスケコマシとかくっつけやがったらスカートめくってやる」
美音の唇はタコみたくちんまり突き出されてたから。
す、から始まる良からぬ言葉を口にしようとしていたらしい。
まったく。伊野の暴言はホイホイ信じやがって。
「…俺のこと、ずっと見てたんじゃねえのかよ、美音。
誰がいつ女子とイチャついてたんだ、っつーの」
「…コンビニに。
一緒に入って来る子は、毎回違ってた」
「…覚えてんじゃねえよ、んなもん。
生徒会のヤツとかだ、きっと」
吐き捨てるように言いながら情けなくなってきた。
…どんなとこ見られてんの、俺。
いや、断じてイチャついてねえし、つき合ってもいねえけど。
美音は一体どんな想いで、俺のそんな姿を眺めていたのか。
美音しか、もう。傍にいて欲しくないのに。
弾み浮かれていた気分は一気に鉛でも飲んだように重くなった。
「…信用、ないか?俺」
「そんなことないよ?
モテるんだから、仕方ない…」
「仕方なくねえよ。
諦めんな、もっと欲張れ」
手袋をはめていない俺達の手は、外側は真冬の北風にさらされ体温を奪われていく一方だけど。
繋いでいる指や内側は熱くてしっとりしている。
籠めた力に反応した美音が俺の顔を見上げてきた。
「…もっと、俺のこと欲しい、って。
欲張れよ、美音」
