美音の話の紡ぎ方は少々難解で。
それは芸術家肌の人間にもしかするとひょっとするとありがちなのかもしれないけど。
いろんな線がある瞬間にクイと引き寄せられ、恐ろしく綺麗に整った蜘蛛の巣が出来上がるような。
…そんな、感じ。
「…相澤くんは、ね。
アイドルみたいな…憧れの、雲の上の人、みたいな存在でね」
いや、隣の席の高2男子じゃん。
照れ隠しも手伝ってぶっきら棒にそう言い切ると、そうなんだけど、と反論される。
「綺麗な手を、見て…ね?
あんな仕草して欲しいなあ、とか。
ピアノ弾かないのかなあ、とか…あああ、変態って目で憐れまないで?」
可愛いな、オイ。
そんな必死で両手振らなくても。
変態なのはお互い様だ。
寒いだろ、と言いながら俺は美音の頬へ手袋の両手を戻し、まんまとその上へ自分の手を重ねる。
…ぬくぬく。
「…で?まだ美音の話が繋がんね」
「…で。
妄想、してて…でも、不意にその手が消しゴム拾ってくれたりするの」
そんなこと、あったっけか。
ああいや、和もそんな話をしていた。
やっぱり美音の話は摩訶不思議。
どこへどう組み合わされるんだろう。
生徒会の話し合いなんて面倒で、結論から先に話さないヤツに議論の余地なんか与えない俺だけど。
…怖いな、恋は盲目だとよく言ったもんだ。
「同じクラスに、なって。
隣の席に、なって。
目が合ったこともなかった」
「…悪かったよ」
過去の俺に触れられればそこはもう、ごめんなさいの嵐だよ。
美音もそれ以外も、一緒くたの世界に置いてたんだからな。
「違うの、あの。
こんな風に、話せるなんて。
妄想すら、したことなかったの」
話せる、だけじゃなく手を繋いだり抱きしめちゃったりだとか。
それ以上のことを俺達はもうしてるし。
俺なんかここだけの話、その先へいつ進めるのかと妄想 逞しい日々だってのに。
「信じらんねえの?俺とこうやってるの。
現実なのに?」
「…叶わないことの方が多かったわ、叶ったことより」
美音の唇からこぼれる“かな”って響きは。
俺の名前じゃないと分かっていても心のどこかがピクリと反応する。
呼ばれたい。
いやそれで、何かが劇的に変わるという確証はない。
それでも、美音にもっと近づける一歩のような気がしている。
…違うな、美音が。
さらに歩み寄ってくれる一歩?
「…相澤くんが。
私の家のこととか、ピアノのこととか。
何を考えてるかとか。
そんなことにまで想いを寄せてくれるなんて」
「妄想できねえよな。
俺、無関心野郎だったからな」
自嘲気味な言葉は美音の悲しげな瞳にすぐ捕まる。
そんなつもりで言ったんじゃないよ、と。
訴えくるのは声だけじゃないのな。
「…嬉しくてたまらないの。
でも格差ありすぎて恥ずかしいの。
妬んだりして惨めなの。
いつかお終いが来る、って覚悟してなくちゃ辛いと思うのにずっとなんて期待しちゃって」
もう、ぐちゃぐちゃなの。
美音の言葉は涙の起点に戻ってふう、と小さく息が漏れた。
好きだから、好きすぎて。
そこもうちょっと、大きめの声で叫んでくれたっていいんだぞ、美音。
それに俺はスパルタだからな?
お終いになんかさせてやんねえよ。
それは芸術家肌の人間にもしかするとひょっとするとありがちなのかもしれないけど。
いろんな線がある瞬間にクイと引き寄せられ、恐ろしく綺麗に整った蜘蛛の巣が出来上がるような。
…そんな、感じ。
「…相澤くんは、ね。
アイドルみたいな…憧れの、雲の上の人、みたいな存在でね」
いや、隣の席の高2男子じゃん。
照れ隠しも手伝ってぶっきら棒にそう言い切ると、そうなんだけど、と反論される。
「綺麗な手を、見て…ね?
あんな仕草して欲しいなあ、とか。
ピアノ弾かないのかなあ、とか…あああ、変態って目で憐れまないで?」
可愛いな、オイ。
そんな必死で両手振らなくても。
変態なのはお互い様だ。
寒いだろ、と言いながら俺は美音の頬へ手袋の両手を戻し、まんまとその上へ自分の手を重ねる。
…ぬくぬく。
「…で?まだ美音の話が繋がんね」
「…で。
妄想、してて…でも、不意にその手が消しゴム拾ってくれたりするの」
そんなこと、あったっけか。
ああいや、和もそんな話をしていた。
やっぱり美音の話は摩訶不思議。
どこへどう組み合わされるんだろう。
生徒会の話し合いなんて面倒で、結論から先に話さないヤツに議論の余地なんか与えない俺だけど。
…怖いな、恋は盲目だとよく言ったもんだ。
「同じクラスに、なって。
隣の席に、なって。
目が合ったこともなかった」
「…悪かったよ」
過去の俺に触れられればそこはもう、ごめんなさいの嵐だよ。
美音もそれ以外も、一緒くたの世界に置いてたんだからな。
「違うの、あの。
こんな風に、話せるなんて。
妄想すら、したことなかったの」
話せる、だけじゃなく手を繋いだり抱きしめちゃったりだとか。
それ以上のことを俺達はもうしてるし。
俺なんかここだけの話、その先へいつ進めるのかと妄想 逞しい日々だってのに。
「信じらんねえの?俺とこうやってるの。
現実なのに?」
「…叶わないことの方が多かったわ、叶ったことより」
美音の唇からこぼれる“かな”って響きは。
俺の名前じゃないと分かっていても心のどこかがピクリと反応する。
呼ばれたい。
いやそれで、何かが劇的に変わるという確証はない。
それでも、美音にもっと近づける一歩のような気がしている。
…違うな、美音が。
さらに歩み寄ってくれる一歩?
「…相澤くんが。
私の家のこととか、ピアノのこととか。
何を考えてるかとか。
そんなことにまで想いを寄せてくれるなんて」
「妄想できねえよな。
俺、無関心野郎だったからな」
自嘲気味な言葉は美音の悲しげな瞳にすぐ捕まる。
そんなつもりで言ったんじゃないよ、と。
訴えくるのは声だけじゃないのな。
「…嬉しくてたまらないの。
でも格差ありすぎて恥ずかしいの。
妬んだりして惨めなの。
いつかお終いが来る、って覚悟してなくちゃ辛いと思うのにずっとなんて期待しちゃって」
もう、ぐちゃぐちゃなの。
美音の言葉は涙の起点に戻ってふう、と小さく息が漏れた。
好きだから、好きすぎて。
そこもうちょっと、大きめの声で叫んでくれたっていいんだぞ、美音。
それに俺はスパルタだからな?
お終いになんかさせてやんねえよ。
