渡部の眉間のシワが一層深く刻まれたのを意地悪く確認した。
爽やか腹黒バージョン発動だ。
ひごよく、と呟き目線上向きの美音はきっと漢字を思い浮かべてるんだろう。
お前一人、思考が斜め上行ってるぞ。
俺はもう一歩近づいて美音には届かないよう渡部の耳元で囁いた。
「…妹属性、ってやつ?
そんな変態に美音は近づけさせたくねえな」
「…性格悪いな、相澤くん…だっけ」
「てめえに言われたくねえよ」
俺の目には特性スカウターが付いてんだから。
敵の戦闘能力なんてお見通しだ。
潜在能力までは分からないけど大抵外れたことはない。
コイツは俺ほどにケンカ慣れしていない。
「…今後、美音にちょっかい出しやがったら。
ただじゃ済まねえぞ」
「…知能指数が低いガキはすぐ暴力に訴えるよね」
「言ってろ。
俺は成績優秀の生徒会長様だよ。
お前のことボコっても揉み消せるだけの金も権力もあるしな」
「…っ、何だってこんなヤツに…」
俺は最大限の爽やか笑顔を残しながら渡部と距離を取ると美音へ振り向き帰ろう、と声をかけた。
ふんわり笑う美音は俺と渡部の会話に見当もついてないんだろうな。
コクリと頷くと俺の肩越しに渡部へお疲れ様でした、ともう一度頭を下げている。
…うん。普通だな。
何故に渡部がこんな行動したか、とか。
俺が渡部に何 言ったか、とか。
そもそもはお前なんだけどね、美音。
ここまで普通だともう。
むしろごめん、渡部。
罪悪感3割増しだ。
ゆるゆると夜道を歩きながら、美音はバッグからマフラーを出し手袋を出す。
首に巻き指を通し終えてもなお寒そうに首を竦めた。
…肩、とか。
こう、抱き寄せ…るのは、ちょっと。
無理、スマートにできねえ。
「…お前さ。あの人から好きだとかコクられた?」
「…“あの人”?」
「渡部って人。さっきの」
闇の暗さに慣れた目なら驚いた美音の表情もよく見て取れた。
眼鏡越しに首を傾げる仕草がやたら可愛く映る。
…計算じゃない、って。
分かってるだけに怖い、コイツの潜在能力。
「え、や、全然まったくそんなの…。
あの、相澤くんが、言ってた通り…妹、みたいな感じで」
小さいな、俺。
あれだけ渡部にダメージ与えたのに。
性格悪いな、マジで。
美音の言質も取りたいと思ってる。
渡部、きっと美音は。
ハッキリ口に出して言わねえと伝わらないタイプなんだよ。
教えてやんないけどね。
「…ああ。
お前もそう思ってんならいいんだ。
変に意識すんなよ」
「…意識?」
「忘れんなよ、ってこと。
美音が好きなのは誰?」
美音の顔を左側から覗き込む。
その顔は黄金比で構成されてるのかもしれない。
右から見ようと左から見ようと綺麗で。
まだ髪を結んだままだから、いくら鼻のあたりまでマフラーで覆い隠そうとしても夜目に耳たぶまで紅く染まっているのが分かる。
「…誰?はい、言って」
「…隣、歩い」「やり直し」
お前。今。
“隣を歩いてる人です”とかいう形容で済ませようとしただろ。
うー、じゃねえよ。
何度でも何度でも繰り返して。
口癖並みに言えるようになれよ。
「……相澤くん、です」
「…お利口。ご褒美」
差し出された紙袋をじっと見て、俺の顔へと視線を移す。
目が合った瞬間、俺はちゃんと笑えてたと思う。
美音の瞳は潤んで一段と大きく見開かれたから。
爽やか腹黒バージョン発動だ。
ひごよく、と呟き目線上向きの美音はきっと漢字を思い浮かべてるんだろう。
お前一人、思考が斜め上行ってるぞ。
俺はもう一歩近づいて美音には届かないよう渡部の耳元で囁いた。
「…妹属性、ってやつ?
そんな変態に美音は近づけさせたくねえな」
「…性格悪いな、相澤くん…だっけ」
「てめえに言われたくねえよ」
俺の目には特性スカウターが付いてんだから。
敵の戦闘能力なんてお見通しだ。
潜在能力までは分からないけど大抵外れたことはない。
コイツは俺ほどにケンカ慣れしていない。
「…今後、美音にちょっかい出しやがったら。
ただじゃ済まねえぞ」
「…知能指数が低いガキはすぐ暴力に訴えるよね」
「言ってろ。
俺は成績優秀の生徒会長様だよ。
お前のことボコっても揉み消せるだけの金も権力もあるしな」
「…っ、何だってこんなヤツに…」
俺は最大限の爽やか笑顔を残しながら渡部と距離を取ると美音へ振り向き帰ろう、と声をかけた。
ふんわり笑う美音は俺と渡部の会話に見当もついてないんだろうな。
コクリと頷くと俺の肩越しに渡部へお疲れ様でした、ともう一度頭を下げている。
…うん。普通だな。
何故に渡部がこんな行動したか、とか。
俺が渡部に何 言ったか、とか。
そもそもはお前なんだけどね、美音。
ここまで普通だともう。
むしろごめん、渡部。
罪悪感3割増しだ。
ゆるゆると夜道を歩きながら、美音はバッグからマフラーを出し手袋を出す。
首に巻き指を通し終えてもなお寒そうに首を竦めた。
…肩、とか。
こう、抱き寄せ…るのは、ちょっと。
無理、スマートにできねえ。
「…お前さ。あの人から好きだとかコクられた?」
「…“あの人”?」
「渡部って人。さっきの」
闇の暗さに慣れた目なら驚いた美音の表情もよく見て取れた。
眼鏡越しに首を傾げる仕草がやたら可愛く映る。
…計算じゃない、って。
分かってるだけに怖い、コイツの潜在能力。
「え、や、全然まったくそんなの…。
あの、相澤くんが、言ってた通り…妹、みたいな感じで」
小さいな、俺。
あれだけ渡部にダメージ与えたのに。
性格悪いな、マジで。
美音の言質も取りたいと思ってる。
渡部、きっと美音は。
ハッキリ口に出して言わねえと伝わらないタイプなんだよ。
教えてやんないけどね。
「…ああ。
お前もそう思ってんならいいんだ。
変に意識すんなよ」
「…意識?」
「忘れんなよ、ってこと。
美音が好きなのは誰?」
美音の顔を左側から覗き込む。
その顔は黄金比で構成されてるのかもしれない。
右から見ようと左から見ようと綺麗で。
まだ髪を結んだままだから、いくら鼻のあたりまでマフラーで覆い隠そうとしても夜目に耳たぶまで紅く染まっているのが分かる。
「…誰?はい、言って」
「…隣、歩い」「やり直し」
お前。今。
“隣を歩いてる人です”とかいう形容で済ませようとしただろ。
うー、じゃねえよ。
何度でも何度でも繰り返して。
口癖並みに言えるようになれよ。
「……相澤くん、です」
「…お利口。ご褒美」
差し出された紙袋をじっと見て、俺の顔へと視線を移す。
目が合った瞬間、俺はちゃんと笑えてたと思う。
美音の瞳は潤んで一段と大きく見開かれたから。
