クラシック




ダウンのポケットに突っ込んだ左腕に提げている紙袋。
視線を落としてニヤけそうになる。
似合いそうだと思ったけど。
…でも。
喜ぶか、これ。
優しい美音のことだから喜ばないわけは…ないだろ。
いやでもフリとかされたら、立ち直るのにかなり時間かかる、うん。
しかもこの冬の新商品です、と言われたけれど。
まさか同じの持ってたりして。
ああ何か、別に欲しいものあったかも。
そんな事前リサーチ、何もしてねえ。



「……うわー、気になる。
もうこれ、今日渡してえー」

「え?ああ、当日に逢えないから?」

「いや、23日に逢うけど気になっ…」

「23日?」



そんなん言ってなかったじゃん!

翔太は口をとがらせたかと思うと瞬時にニヤリ顔を作った。
いやお前、別に訊かなかったじゃん。
夜目にも分かるその意味ありげな表情に俺は思わず顔を背ける。



「…何?やっぱ何かすんの?
2人きりで?
オレよか先にオトナになっちゃうんだ、かなちゃん?」

「ぜひとも翔太より先にオトナになりてえけど。
何もしねえよ、昼間にうちに呼ぶだけ」

「クリパ?かなちゃん家で?
オレも呼んでよー!
恋する2人の邪魔しないように最善の努力はするから!」



努力とかじゃねえだろ。
努力って何だよ。
お袋と姉貴と親父と。
それだけでも面倒だと思ったのに。
面白がってる参加者がもう一人増えんのかよ。



「あ、かなちゃんの親戚は?
誰も来ないの?」

「絶対呼ばねえ!」



和が俺の従兄だと知っているのは翔太だけ。
俺の家には前から出入りしてるからな、顔を合わせたこともある。
和以外にも従兄弟連中は多いけど、妙なことに全員男だから。
絶対、呼ぶもんか。
面白がられていちいち茶々入れられるか。
美音にちょっかい出されるか。
きっと誰一人放っといてくれないことは確かだ。



「美音ちゃんにさー、ピアノ弾いてもらおうよ!
オレ、間近で見たい!」

「おかしいだろ?それ。
“聴きたい”じゃねえのかよ」



…やっぱ今日渡そう、これ。
23日は何か別で考えよう。
一緒にプレゼント買いに行ってもいいし。
で、25日の予定も訊こう。
ああでも、ピアノの練習したいだろうな、美音。



ふう、と吐いた息は闇の中へ白く不思議な形を作っては消えていく。
俺の方が好きすぎてんな。
美音のことしかないのか俺の頭の中は。
それとも誰かを本当に好きになる、って。
こうも中毒みたいに一気にのめり込んでいくもの?



「楽しみだなー!
かなちゃん家のご馳走、すげえもん!」

「…七面鳥、掴まえてこいよ」