クラシック

運ばれてきた大皿にかぶりつくような勢いでナイフとフォークを動かしながら、翔太は器用に口も動かす。



「プレゼントあげたり貰ったりとか、しないの?」

「………」



プレゼント。
プレゼント、ねえ。
俺はサンタじゃねえし、靴下つるして寝たふりして待ってる子どもでもないけど。
そういう大手広げて待たれてるイベントに飛び込んでいくようなマネは反発心が疼くんだけど。
景気動向の上向きにちょっとぐらい加担してやっても、いいかもしれない。
…なんて。
つくづく可愛げねえな、俺。



「え、そんなに考え込まなきゃいけないこと?
それとも考えてもなかった?」

「んー。後者」



フォークに刺した肉の塊を口いっぱい頬張る翔太は じゃあ選びに行こうよ、などと誘う。
…うん、いいけど。
お前、食べながら喋んな。
それに。



「…翔太。
まだ、美音のこと好きだったり…するワケ?しないワケ?」



俺の質問にむせた翔太は涙目になりながら水を飲み胸を握りしめた拳で叩いている。
どうしたものかとしばらくじっと見つめていたけれど、翔太の手が俺の目の前でヒラヒラと否定の意を表したから。
俺はやっと表情を緩めることができた。



「はああー、怖いよかなちゃん!
射抜かれて死ぬかと思った!」

「…大袈裟な。
目だけで殺せるか、バカ」

「いーや、キミならイケる。
世界三大恐怖の瞳はスフィンクスかバジリスクか相澤 奏成かという、ね!」



視線を逸らし呼吸を整えもう一度コップの水を口へ運ぶ翔太は、県道に面している大きな窓の外へ目をやる。
つられるように見つめたコンビニの青白い光は目に入るけれど、さすがにここからでは店内の様子は窺えなかった。



「…本当に、美音ちゃんが欲しかったなら。
その視線の先にいつも奏成が居ようと、手ぐすね引いて待ってたりしなかった。
…と、思う」

「……ん」

「奏成との友達関係がぐっちゃぐちゃになるのは、嫌だった。
と、思って抑えてた気持ちってのは、結局その程度のものだったんじゃないのかな」



抑えられてた、ってことだから。

俺へと視線を戻した翔太とバッチリ目が合う。
ふわりと微笑まれて、俺は瞬きを返すしかなかった。



「美音ちゃんの幸せがオレの幸せなんて達観したこた言えないけどね?
でも応援してるよ、どっちのことも」



面白がってる、とも言う。

ニヤリ顔で追加した翔太との友情は俺もぐっちゃぐちゃにしたくない。
かといって逆の立場だったらこんな風に表情筋を動かすことすら出来なかったんじゃないか。
最終的に茶化す、とか高等テクも持ち合わせてないし。
ネコなんてかぶれねえよ、絶対。
やっぱり自分の小ささが浮き彫りになって、へこむわ、俺。



「…いいヤツ。翔太」

「そうでもないよ?
奏成が美音ちゃんと別れたらオレがソッコーいただくので。
虎視眈々と狙っときます」

「残念。別れねえから。
その力、他に活かせよ」



ぶー、とまた珍妙な擬音語を吐いて口をとがらせた翔太は、この時間でも開いている大手百貨店の名を挙げ早く食べ終わるよう俺を急かした。