クラシック






奏成くんの手が、好きだった。
とっても、好きだった。



手フェチかと訊かれても。
本当は答えに困らなかった。



奏成くんが好きだったから。



手だけじゃなくて。
でも、私にとっては雲の上の存在だから。
せめて、手だけでも見つめていたかった。



今、手を伸ばせば。
握り返してくれる確かな近さに、大切にしたい温かさがある。
ため息して諦めてばかりいたけれど。
ため息は捨て、諦めるのはやめよう。





体育館の倉庫奥。
埋もれていた日常に知らなかったメロディーがあった。
教えてくれたのは、奏成くん。



ねえ、これから先。
いつまでもいつまでも一緒にいてね。
私達から広がる音は無限で、
纏う色は多彩で、
目にする景色は時間旅行だよ。
知らないメロディーはきっともっとたくさんあるよ。





道はつるりと滑らかじゃないから。
辛いことも苦しいことも悲しいこともあるよね。
不思議と今は怖くないよ。
てっぺんのその先はさらに険しくて転んで怪我をしたとしても。
奏成くんは私を抱き起こし射し示す光へと導いてくれるでしょう?




ありがとうね。
私の手を、いつも引いてくれて。
ありがとう。
私の音を、いつも弾いてくれて。





いつの日か。
あなたの心にも私達の音が響きますように。
いつの日か。
愛しい誰かと美しい音を奏でることができますように。





Fine.