届く言葉は真っ直ぐで。
私の涙腺を刺激する。
でも、奏成くん。
私の音はきっと、私だけが響かせてるんじゃない。
「どんだけ…羽ばたいてくれてもいいんだ、けど。
本当に美しい音が、俺といることで奏でられるように成るってんなら。
うちの会社に来て?美音。
俺をずっと傍に、置いて」
敏腕マネージャーだからな、いい仕事すんぞ、って。
茶化すように奏成くんは続けた。
そんなの、知ってる。
「“うん”か、“はい”か二択。どっち?」
「…ふふ…」
「泣きながら笑うのなし。どっち?」
「はい…よろしく、お願いします」
「っしゃあ!」
奏成くんが立ち上がり、私の身体も引き上げてくれる。
わ、顔が近づいてきた。
と思ったらカーテンがシャッ、と小気味よい音を立てて開かれた。
「かーなー!
神聖なる学校だぞエロ少年!
3時間目終わったよ!」
「…チ。
もうさ、ここまできてんだから空気読めよ、和。
スカウト成功記念のチューくらい」
「あ、そうなんだ?
いいなー、僕も叔母さんとこで働きたいなあ」
憮然とした表情で奏成くんは両手をだらりと下ろし、はあ、と大きなため息を吐いた。
行こう、とゆるり背を押される。
濡れた目元と頬を慌てて掌で拭った。
「ったく、何 言ってんだ。医者は要らねえよ」
「えー?
でも会社大きくなったら産業医とか要るよー?」
「いずれ俺が社長だぞ?…いいのかよ、和」
苦笑しながら“いずれ”を見据える奏成くんは、ちょっとだけ先に大人になってしまうような気がした。
和先生は柔らかな眼差しで奏成くんをくるりと包み込み、なんてことないように言うんだ。
「奏と一緒に働くのは楽しそうだし。
もう少し大人になったら今ほどエラソでもなくなるでしょ」
「…誰がエラソだ、コラ」
じゃあな、と言い置いて奏成くんは保健室の引き戸をカラカラと開ける。
笑んだ口元のまま来るかなあ、と面倒そうにまたため息した。
見上げる私とかちり、視線を合わせてくれる。
「…何が?来るの?」
「何がってほら…」
「相澤ああああっ!この仮病ズル!」
「勝手に新語を作んな、伊野。
いやもう、腹 痛かったのなんのって」
「あれ?奏ちゃん、頭じゃなかった?痛かったの。
あ、美音ちゃんおかえりー」
「…翔太。
スルーって技を覚えようぜ」
「美音おおおおっ!寂しかったよーっ!」
奏成くんとはまた違った柔らかな強さで。
ぎゅうぎゅうと抱きしめてくれるしーちゃんが愛しい。
確かめさせてくれる温もり。
私、ここにいるんだね。
戻ってきたんだね。
ありがとう、大好き、って。
シンプルな言葉をどれだけでも伝えたくなる。
私の音は、きっと。
こうしてまた何色にも幾重にも彩られていく。
「…見て。あんたのバカレシ」
「…バカレシ?」
「表情筋の再生手術受けさせないと!能面になってるよ!
ちょっとハグハグしてるだけじゃん、やだねえ、ほんと度量の狭い男って」
「うっせえな!イノシシ子!瓦割ってろ!」
「ムカつくー!いいよもう美音の中学の頃の写真あげないよ!セーラー服が超可愛いのに!」
「…伊野様。特注で黒帯 作らせますので!何とぞ!」
早く教室戻って、と。
戸の端に凭れた和先生が苦笑を浮かべ呆れた口調で仰った。
私の涙腺を刺激する。
でも、奏成くん。
私の音はきっと、私だけが響かせてるんじゃない。
「どんだけ…羽ばたいてくれてもいいんだ、けど。
本当に美しい音が、俺といることで奏でられるように成るってんなら。
うちの会社に来て?美音。
俺をずっと傍に、置いて」
敏腕マネージャーだからな、いい仕事すんぞ、って。
茶化すように奏成くんは続けた。
そんなの、知ってる。
「“うん”か、“はい”か二択。どっち?」
「…ふふ…」
「泣きながら笑うのなし。どっち?」
「はい…よろしく、お願いします」
「っしゃあ!」
奏成くんが立ち上がり、私の身体も引き上げてくれる。
わ、顔が近づいてきた。
と思ったらカーテンがシャッ、と小気味よい音を立てて開かれた。
「かーなー!
神聖なる学校だぞエロ少年!
3時間目終わったよ!」
「…チ。
もうさ、ここまできてんだから空気読めよ、和。
スカウト成功記念のチューくらい」
「あ、そうなんだ?
いいなー、僕も叔母さんとこで働きたいなあ」
憮然とした表情で奏成くんは両手をだらりと下ろし、はあ、と大きなため息を吐いた。
行こう、とゆるり背を押される。
濡れた目元と頬を慌てて掌で拭った。
「ったく、何 言ってんだ。医者は要らねえよ」
「えー?
でも会社大きくなったら産業医とか要るよー?」
「いずれ俺が社長だぞ?…いいのかよ、和」
苦笑しながら“いずれ”を見据える奏成くんは、ちょっとだけ先に大人になってしまうような気がした。
和先生は柔らかな眼差しで奏成くんをくるりと包み込み、なんてことないように言うんだ。
「奏と一緒に働くのは楽しそうだし。
もう少し大人になったら今ほどエラソでもなくなるでしょ」
「…誰がエラソだ、コラ」
じゃあな、と言い置いて奏成くんは保健室の引き戸をカラカラと開ける。
笑んだ口元のまま来るかなあ、と面倒そうにまたため息した。
見上げる私とかちり、視線を合わせてくれる。
「…何が?来るの?」
「何がってほら…」
「相澤ああああっ!この仮病ズル!」
「勝手に新語を作んな、伊野。
いやもう、腹 痛かったのなんのって」
「あれ?奏ちゃん、頭じゃなかった?痛かったの。
あ、美音ちゃんおかえりー」
「…翔太。
スルーって技を覚えようぜ」
「美音おおおおっ!寂しかったよーっ!」
奏成くんとはまた違った柔らかな強さで。
ぎゅうぎゅうと抱きしめてくれるしーちゃんが愛しい。
確かめさせてくれる温もり。
私、ここにいるんだね。
戻ってきたんだね。
ありがとう、大好き、って。
シンプルな言葉をどれだけでも伝えたくなる。
私の音は、きっと。
こうしてまた何色にも幾重にも彩られていく。
「…見て。あんたのバカレシ」
「…バカレシ?」
「表情筋の再生手術受けさせないと!能面になってるよ!
ちょっとハグハグしてるだけじゃん、やだねえ、ほんと度量の狭い男って」
「うっせえな!イノシシ子!瓦割ってろ!」
「ムカつくー!いいよもう美音の中学の頃の写真あげないよ!セーラー服が超可愛いのに!」
「…伊野様。特注で黒帯 作らせますので!何とぞ!」
早く教室戻って、と。
戸の端に凭れた和先生が苦笑を浮かべ呆れた口調で仰った。
