およそ15分なんて演奏時間が過ぎゆく流れを感じ得なかった。
美音は目に見えない糸を自身へ手繰り寄せ、掌の内に収める。
魔法の手。
しなやかで鮮やかな動きは止み、息づいていた鍵盤は白と黒の無機質な存在へ戻っていく。
美音は、まだ動かない。
「…は、拍手…」
パン、と突き抜けるような軽快な音を響かせたかったのに。
奏クマ握りしめたままだった。
くっそ、どこまでカッコ悪いの俺。
そんな俺の歯がみを余所に誰もかれもが我に返り掌と掌を力の限り打ち鳴らしていく。
「奏ちゃあああんっ!美音ちゃんすっっごいねっ!すっごいよ!感動したよオレ!これが感動ってやつだよっ!」
「ぐ、っえ、ゆ、揺さぶん、なっ!って!首、締ま、あっ指!痛っ」
いつまでも、いつまでも。
鳴り止まぬ拍手。
その渦はあっという間に場内を包み込み、人々の興奮は熱気となって室温が上がったようにすら感じた。
ようやく、美音のぼんやり脳ミソに指令が下されたらしい。動け、と。
「あ、はっ…アイツ、ほんっとおバカ…」
今になって右手右足って。
何なのそれ、天然すぎてむしろ褒めてやるよ。
放心のまま転びそうになって。
笑いすぎてこぼれ落ちた涙だと誤魔化すように。
俺は口元を思いっきり緩めながら包帯の白に雫をしみ込ませた。
