デッキにCDを入れイヤホンを手に美音の隣へ座る。
良くね?これ。この構図。
いっぺんやってみたかったんだ。
翔太とで我慢しなくて良かった。
イヤホンを左耳にはめ、もう片方を美音へ差し出す。
瞬間、笑みが固まったその分かりやすい反応が面白い。
何度瞬きして確認したって変わらねえよ。
1本のイヤホン、2人で使うんだって。
あ、ちょっと残念そうな顔。
イヤホン、手にしたけど。
なんで?そんなにヤだったのか?
「…音、ちゃんと聴こえないんじゃ…」
「あ、そっち?」
そっちの理由か、さっき見せたあの顔は。
いちいちビクビクするくらいなら最初から美音に無理させなきゃいいじゃんか、と自分を恨めしく思ったりするんだけど。
何て言うのかな、今日はいつにも増して美音の表情が豊かにくるくると変化を見せて。
俺がそうさせているからか、と思うと妙な満足感がたぎってくるんだよな。
馬鹿な俺。
「これな、ユニバーサルイヤホン。
ちゃんと片っぽからでも綺麗に音 聴こえるから。
右にはめて」
「そんなのあるんだ」
髪が揺れふわりと良い薫りが漂う中、耳へイヤホンをつけていく。
伏し目がちに笑う美音の可愛さったら。何だこれ。
顔を上げた拍子にバッチリ目が合って、チラチラ揺れる黒目に鼓動が恐ろしいほど跳ねた。
美音の頬はまた真っ赤。
照れるよな、うん。
集中して聴けねえかもしんない。
「自分の演奏聴くのって、勉強になるんだけど恥ずかしいのよね…」
……そうか。
お前、独りでものすっごく集中しちゃうか。
2人の世界にはならねーか。そりゃそうか。
でも今更CDを換えるってのも無粋。
「じゃあ、こうだな」
絡めた手を、並んで座った俺の膝の上へ置く。
美音の指は動きたがるかな。
ごめんな?美音。
隣に居る間くらい、俺の存在 忘れないでくれ。
何のじゃあ、か分からない、と屁理屈こねる美音を横目に俺はリモコンのスイッチを押した。
案の定。
美音は俺の何倍も真剣に、微塵も色香なんざ漂わせず、むしろ厳めしい表情で耳から流れくる音に聴き入っている。
…繋いだこの手は放置プレイか。
やわやわ握りしめてやるぞ、こんちくしょう。
あ、間違えたここ、とか。
ペダルが遅れた、とか。
美音はド素人の俺には分からないミスを自身で指摘しながら、何かを追い求めるようなストイックな姿勢を崩さない。
もう、あれじゃね?これ。
体育会系の強化合宿で見かける表情、というか。
舞台俳優が難役に自身を追い込んでいく時の空気、というか。
何か、もう。
何だろう、これ。
置いてきぼり感 満載だ。
満載なんだけど不思議と寂しくはない。
手を繋いでいるから、だけじゃないだろ。
美音の魔法は俺へもちゃんと、美音と同じ景色を見せてくれている。
いるんだ、そこに。
美音も俺も。
美音は隅々までチェックの目を行き届かせて、さらに美しい作品を作り上げようと邁進してる、っつーのに。
俺は大局見通してるかのようにデンと居座っていいんじゃね、なんて呑気に言ってんの。
…浮かぶわ、目に。
鼻から漏れた苦々しい笑いは小さく空気を揺らした。
良くね?これ。この構図。
いっぺんやってみたかったんだ。
翔太とで我慢しなくて良かった。
イヤホンを左耳にはめ、もう片方を美音へ差し出す。
瞬間、笑みが固まったその分かりやすい反応が面白い。
何度瞬きして確認したって変わらねえよ。
1本のイヤホン、2人で使うんだって。
あ、ちょっと残念そうな顔。
イヤホン、手にしたけど。
なんで?そんなにヤだったのか?
「…音、ちゃんと聴こえないんじゃ…」
「あ、そっち?」
そっちの理由か、さっき見せたあの顔は。
いちいちビクビクするくらいなら最初から美音に無理させなきゃいいじゃんか、と自分を恨めしく思ったりするんだけど。
何て言うのかな、今日はいつにも増して美音の表情が豊かにくるくると変化を見せて。
俺がそうさせているからか、と思うと妙な満足感がたぎってくるんだよな。
馬鹿な俺。
「これな、ユニバーサルイヤホン。
ちゃんと片っぽからでも綺麗に音 聴こえるから。
右にはめて」
「そんなのあるんだ」
髪が揺れふわりと良い薫りが漂う中、耳へイヤホンをつけていく。
伏し目がちに笑う美音の可愛さったら。何だこれ。
顔を上げた拍子にバッチリ目が合って、チラチラ揺れる黒目に鼓動が恐ろしいほど跳ねた。
美音の頬はまた真っ赤。
照れるよな、うん。
集中して聴けねえかもしんない。
「自分の演奏聴くのって、勉強になるんだけど恥ずかしいのよね…」
……そうか。
お前、独りでものすっごく集中しちゃうか。
2人の世界にはならねーか。そりゃそうか。
でも今更CDを換えるってのも無粋。
「じゃあ、こうだな」
絡めた手を、並んで座った俺の膝の上へ置く。
美音の指は動きたがるかな。
ごめんな?美音。
隣に居る間くらい、俺の存在 忘れないでくれ。
何のじゃあ、か分からない、と屁理屈こねる美音を横目に俺はリモコンのスイッチを押した。
案の定。
美音は俺の何倍も真剣に、微塵も色香なんざ漂わせず、むしろ厳めしい表情で耳から流れくる音に聴き入っている。
…繋いだこの手は放置プレイか。
やわやわ握りしめてやるぞ、こんちくしょう。
あ、間違えたここ、とか。
ペダルが遅れた、とか。
美音はド素人の俺には分からないミスを自身で指摘しながら、何かを追い求めるようなストイックな姿勢を崩さない。
もう、あれじゃね?これ。
体育会系の強化合宿で見かける表情、というか。
舞台俳優が難役に自身を追い込んでいく時の空気、というか。
何か、もう。
何だろう、これ。
置いてきぼり感 満載だ。
満載なんだけど不思議と寂しくはない。
手を繋いでいるから、だけじゃないだろ。
美音の魔法は俺へもちゃんと、美音と同じ景色を見せてくれている。
いるんだ、そこに。
美音も俺も。
美音は隅々までチェックの目を行き届かせて、さらに美しい作品を作り上げようと邁進してる、っつーのに。
俺は大局見通してるかのようにデンと居座っていいんじゃね、なんて呑気に言ってんの。
…浮かぶわ、目に。
鼻から漏れた苦々しい笑いは小さく空気を揺らした。
