ああ、もう心臓が喉から出てきそう。


後日、新條さんに連れられケーと共に私は事務所の社長に会うことになった。
そして、歌声を披露するようだった。



「失礼します」


新條さんがコンコンとノックをしてから、中に入る。
それに私とケーも続いた。



しっかりとした革張りのソファ。
重厚感のある机。
それだけで私は背中に嫌な汗を掻いていた。


「おお、来たか。座って座って」


鼻の下に髭を生やした初老のおじさん。
やけに明るい口調でそういうから、私は呆気にとられていた。



「ケーもこんな可愛い子ナンパして来たのか」

「でしょう?川和田さん」

「はっはっは。とりあえず、ビジュアルはオッケーだな」

「ダメって言われても僕は引き下がりませんけどね」

「だよなあ。ケーは頑固で困る」

「社長。ケー。彼女の方が困ってます」


新條さんがそう言うと、二人ははたと会話を止め私を見た。
急に見ないで欲しい。変に緊張するから。


ソファに浅く腰かけながら私は苦笑いをする。