フリーターになって、一年が過ぎた。
懲りずに私は駅前で歌っている。


オーディションだって受けた。
けど、落ちるばかりだ。


流石に現実の厳しさを理解し始めていた。
いい加減就職して、“趣味”として歌った方がきっといいんだって。



そんな矢先だった。
先程の彼に会ったのは。



今更、上手ですね。だなんて。


……嬉しくないわけじゃない。
きっと、彼も同じだから。


他の人と一緒だから。



歌がうまい人なんて、世の中ごまんといる。


私より可愛い子なんて、きっといる。
そしたら、そこに私の居場所なんてない。