ゆっくりと手を開き、私はぐちゃぐちゃの切符を見て自嘲する。


素直に感想をくれたあの彼に、あんな態度。
これじゃただの八つ当たりだ。


それでも、素敵な笑顔でありがとうだなんて言えるわけがない。


上手って言うだけで誰も認めてなんてくれなかった。



高校を卒業したら、歌で食べて行きたい。
これは嘘じゃなくて、本気だった。


だけど、そう宣言した私に対して皆の反応は冷たかった。



夢見過ぎてるとか。
確かに上手だけど、それじゃプロになんてなれないんじゃない?とか。
親も就職しなさいと言うだけ。


結局親の反対を押し切って私は高校卒業後、フリーターになったわけだけど。


昼間働いたその足で駅前に来ると歌をうたう。
お金なんて要らなかった。


ただ、私を求めて欲しかっただけ。


歌手、そんなモノ。



大きくて、遠くて、儚い夢だった。