「熱が下がらなくて心配で彼の家を訪れたんですが、その時に頼まれたんです。
貴方が駅前に来ていないか見て欲しいって。
きっと、来ると言ったのに来ない僕を待ってるからって」
「……」
待ってなんかないのに。
やっぱりオカシイ奴。
自意識過剰も甚だしい。
「……貴方には風邪が治ったら行くと伝えてくれと言われたんですが、これから彼に会ってくれませんか?」
「え?」
これから?
何を言ってるの?
そんな顔をしてたのだろう、目の前の男は苦笑した。
「そんな反応だろうと思いました。
けど、彼に文句の一つもあるでしょうから」
「……そんなの、」
「ないと言い切れますか?」
「……」
「ケーの音楽を聞いたでしょう?あ、私は彼のマネージャーを務めてましてね」
こういう者です、とスーツの内ポケットから名刺ケースを取り出すとそこから一枚私に差し出す。
はあ、と言いながらそれを受け取った私はそこに書かれた名前を見る。



