一時間程歌った後、私は家に帰る準備をした。
電車に揺られている間、思うのはケーの事。


……おかしなヤツだった。



いきなり僕の曲をうたってくれ、だなんて。


初めて求められた事が、嬉しかったのだろうか。
どこか、心が温かく感じて仕方ない。


そんな私って単純じゃなかったと思うんだけど。


求められなくて、荒んでしまった心には思った以上にその言葉は沁みたらしい。
でなきゃ、あんなおかしなヤツ。


歌しか、私にはなくて。
それ以外の趣味なんて持ち合わせていなかった。


だから、友達だって少ない。
人付き合いは苦手だ。

合わせたりしなきゃならないのが苦痛だった。


面白くもないのに笑えない。
正直に伝えてしまう私は、いつしか周りから敬遠されてしまっていた。



それでも、構わない。
そう思ってたけど。


――――…寂しかった。


そんな言葉、口になんて出せなかったけど。