彼の視線を感じる。
そして、曲が始まった事により帰宅の波に流れていく人も何人か興味を示してくれた。


すうっと息を吸って口を開く。
私は誰に聞かせるわけでもなかったけど、心を込めて歌った。


ケーの為に、なんてのは思わなかったけど。


それでも、聞いてくれている観客の為に。


それだけは思った。



「ふぅ…」



歌い終えた後、私は一息つく。
ぱちぱちと何人かが拍手をしてくれた。もちろんその中にケーの姿もある。



「リクエストとかしていい?」

「知ってる曲なら」

「じゃあ、あのさ」


素っ気ない態度だけど、ケーは嬉々としていた。
悩みながら歌をリクエストしてくれる。

そして、それを歌い上げるとまたケーは嬉しそうに拍手をしてくれた。