「だから、ぜひ僕の曲を聞いて前向きに考えて欲しい」

「……」



私は真剣に伝えてくれる彼に、小さくコクンと頷いた。
誘いは断るつもりだったけど、曲を聞くぐらいならいいかな。


愛想のない私にも彼は嫌な顔一つすることがない。
寧ろ、ずっと笑顔だからそれがケーの標準の顔じゃないのかとまで思える程。



「あ、歌の邪魔しちゃったね。ごめん。君が迷惑じゃなければなんだけど…、ここで聞いててもいいかな」

「……どうぞ」

「本当?よかった」



目の前にケーがいてやりにくい事は間違いないけど、それでも観客がいるってのは嬉しい。
誰かに聞いて貰える。それは私のモチベーションを上げた。



「それじゃあ」


失礼します、と尻すぼみに呟きながら私はギターをポロンと一度弾く。
そして、弦を弾きながら演奏を開始した。