私が彼に出逢ったのは、雪が降る前のとても寒い冬の日だった。 その日も、私は駅前で歌をうたっていた。 誰も足を止める事はない。 それでも、私は誰かに届くのではないか。 そう、思って歌を紡いだ。 「……上手ですね」 そうやって、一人の男の人が私に声をかけて来た。 「ありがとうございます」 私は愛想なくそう答える。 首だけぺこっと動かして、彼の目を見る事もない。