「僕を埋めてくれる何かを。でも、見付けた」
「……」
やっぱり聞いても、意味がわかんないな。
私は無表情でそのアルバムを、開いたカバンの口に放り込む。
ケーはしゃがみ込み、私と視線を合わせるとゆっくりと口角を上げた。
「君の事だよ」
「……は?」
その意味を理解するのに少し時間が必要で、私の口からすぐに言葉は出てくれなかった。
素っ頓狂な声を出していたと思う。
だけど、彼は再度同じ言葉を口にした。
「何かってのは、君の事だよ」
「……いや、ちょっと意味がわからないんですが」
「そのまんま。ずっと求めてた。僕のイメージに合う歌声を」
「……」
「君の声がぴったりだった。だから、初めて聞いた時泣きそうだったよ」
そんな事…、初めて言われた。
泣きそうだったなんて。
上手だねってのはたくさん聞いた。
だけど、それだけだった。
だから、この言葉は正直とても私の心に沁みた。



