「歌、って…」
「そのまんま。僕、作曲しててさ。
君の声があまりにもイメージにぴったりだから、驚いたんだよ。
これは運命だって」
「……プロとかなんですか?」
「いや、プロっていうか…」
そうやって言葉を濁すと、彼は腕を組みながら難しい顔をした。
私は彼の言葉を待つ。
少ししてから彼は何故かポケットから携帯を取り出すと、何やら操作をして私に画面を見せた。
「ボカロ、ってあるでしょ?それに歌わせて、ここで公開してる」
「……」
ああ、ボカロか。
合成音声。
私はあれがあまり好きじゃない。
機械の声がどうも耳障りで、聞けないんだ。
感情のない声がどうしても好きになれない。
「僕はケーって名前で活動してる。ケーってのはそのまま僕の名前」
「はあ」
「一応、CDとかも出してるんだよ」
「えっ?」
ボカロと聞いて興味がなくなっていた私だったけど、その言葉には思わず目を見開いた。



