「……ひまりさん。落ち着いて聞いてください」
新條さんが私を見て、はっきりと口にする。
だけど、既に私の頭の中は真っ白だ。
落ち着いてなんかいられない。
「ケー、何が、あったの?」
喉の奥が張り付いて、うまく言葉になんてなってくれない。
どうしたって声が震える。
新條さんはその問いに気まずそうに視線を逸らした。
唇を噛みしめると顔を歪める。
私の肩にそっと手を乗せた。
その手は微かに、震えていた。
「ケー…が、事故に、遭いました」
「え?」
「電車の、脱線事故だそうです」
「……」
「今、ニュースで騒がれています」
「……ぶ、じだよね?」
「……」
無言に、なんてならないで。
ならないでよ。
私の肩に乗った手に力が入り、ぎゅうっと掴まれた。
新條さんの瞳には薄らと涙が浮かんでいた。
あんなに無表情で、感情を表に出さない新條さんが、泣いている。
それだけで、ケーが今どんな状態なのかなんて想像ついた。
聞きたく、ない。
新條さんの口からその言葉を聞きたくない。



