私はそれを横目にぽろんと一度弦を撫でた。



それから弦を押さえて、弾いて行く。
軽快な音が流れると波に紛れた人達が、時に迷惑そうに、時に興味ありげにこちらを見た。



その視線を確かに感じながら、私は口を開く。
流行りのPOP。


模倣だけど、真似だけど。
歌い方は私独自のモノ。



自分なりに歌詞を受け取って、そして言葉を発しているんだ。


そんな小さな努力を見てくれる人は誰もいなかったけど。



私は人の目を気にする事なく、数曲一気に歌い上げた。
一旦手を止めると、寒さが身に沁みる。



冷めてしまったココアを口に流し込む。
温かい時は美味しいのに、冷めた後のどろりとした感触が少しだけ不快だ。



その時。


パチパチパチと手を叩く音が私の耳に届いた。