「……とても嬉しいことだとは思いますが、娘のデビューには反対です」
「え」
それに驚いたのは私だった。
まさか、反対されるなんて思ってなかったからだ。
私が歌手になりたがっていたのは知っていたはずだ。
「高校を卒業してから、娘は様々なオーディションなどを受けました。
ですが、全て落ちてしまい、一年が経ちました。
そこで傷付いていく娘を見てきた私としては、素直に喜ぶことが出来ません。
デビューしても必ず売れるわけじゃない。そんな甘い世界じゃないのは、きっと娘が一番わかってる筈。
応援したい気持ちはあります。
ですが、また夢敗れた時の娘を考えると、どうしても…頷けないんです」
「……お父さん」
見ててくれたんだ。
私の両親は私に呆れて何も言わなくなったんじゃなくて、好きにさせてくれてたんだ。
見守ってくれてたんだ。
初めて聞くお父さんの想いに、胸が熱くなる。
「大丈夫ですよ」
シンっとなった静寂を壊して、そう言ったのはケーだった。
一斉に視線がケーに集まる。



