次の日、朝。
 自分でもいつ眠ってしまったのかわからないほどに、気が付いたらベッドにいて、気が付いたら隣りで美夕ちゃんが気持ちよさそうにごろりと寝返りを打ったところだった。
 枕元の時計を見ればもう起きる時間で。
 美夕ちゃんの体をゆさゆさと揺すった。

「美夕ちゃん、遅刻しちゃうよ」

 木曜日。

 まだまだ普通の平日。美夕ちゃんが泊まってくれた今日も例外なく学校へ行かなくてはいけない。

「ん~~っ……う?…おはよセレン…ふわぁ~っ」

 マイペースな美夕ちゃんが欠伸をしたのが何だか可愛らしくてくすりと笑った。

「あ。セレン笑った!良かった~昨夜は一度も笑わなかったから、心配しちゃった。んーっ…セレンは学校行くの?まだ、目腫れてるよ」

 言えば私の目の手を伸ばして瞼をそっと撫でてくれたので、思わず目は閉じた。

「ん…腫れぼったい感じする…目開けてるの億劫…ちょっと、泣きすぎちゃったかも」

 手を引っ込めた美夕ちゃんが首を傾げながらパッと明るい声を出した。

「セレンのお母さんに、今日はセレンお休みさせたいって、私お願いしてみよっかな!えっと、部活の絵が上手く行かなくてーって言えばいんだよね?今日ちょうど部活の日だし、わかってくれるよね!」

 そんな事を美夕ちゃんにお願いしていいのかよくわからなくて、ベッドから体を起こした。

「あ、ううん、学校行くよ。平気」

 努めて明るい声を出したつもりが、声はかすれてあちこち裏返って喉に手を当てた。

「はいはーい寝てくださーい、こんなセレン学校行かせたら私お兄ちゃんに怒鳴られるよ!あいつ結構熱血ってゆーか、なんかもう寒いくらい情熱燃やしすぎっていうかホントもうーださい」

 緑君。
 昨日はたくさん、迷惑掛けてしまった。
 早く会って謝りたいけれど。

「…緋色、大丈夫だったかな」

 ぽつり落とした言葉がベッドに沈んで行く。

「お兄ちゃんに聞いてみるね、セレンは気にしなくていいから!はいはい、横になって!顔洗わせてもらうついでに、セレンのお母さんに事情話して来るね!」

 言った美夕ちゃんはいそいそと制服に着替えて部屋を元気に出て行った。