次の日、緋色が学校を休んだ。
 お昼になっても緋色は中庭に来なくて、心配になってラインに連絡を入れるも既読すら付かず。緋色の教室へ向かったら来ていないとクラスの人に言われた。
 なんとなく緑君には会いづらかったからそのまま戻って来てしまったけれど、緋色と連絡が取れていない以上、緑君にもちゃんと聞いてみたら良かったと後悔した。

 学校が終わるチャイムが響く。
 相変わらずラインは既読にもならず。
 意を決してもう一度、緋色の教室まで走った。私のとろい足で間に合うかわからなかったけれど、緑君が帰ってしまう前に。

 息を切らしたどり着く3年生の教室。

「おー緋色の彼女、あいつ休みだよ?」

 たまたま目が合った、昼休みに聞いた人とは別のクラスメイトの人にそう声を掛けられて首を振った。

「あの、緑君、えと、光月緑君、いませんか」

 聞いてみたら一旦出た教室を中に戻ってぐるりと探してくれて、少し待ったら戻って来た。

「今呼んだから、んじゃ緋色によろしくなー」

 緑君、間に合った。
 名前も知らないその人に深々頭を下げて手を振った。

「…どしたの」

 やがてやって来た緑君は、私と一緒でやはり気まずそうな顔をして。「この後緋色んちで会うんだから一緒に帰る必要もないでしょ」とでも言いたそうに目をそらした。
 でも用件は違うから、ひとつ大きく深呼吸をして緑君に向き直った。

「緋色が、連絡取れないの」

「え?」

「お昼に、ラインしたけど、既読も付かなくて、昨日の夜も特に連絡取らなかったから、えと、最後に緋色に会ったの昨日のお昼休みで、それから話せてなくて、緑君だったら、何か知ってるかなって思って、来たの」

 事情話せば緑君も鞄からスマホを出し何かをぽちぽちと打ったようだった。
 そこから数十秒、何をするでもなく立ち尽くし。

「…既読、付かないね」

 言われた。
 どうしたんだろう。

 緋色は一人暮らしだから、部屋で倒れたりしたら誰が見つけられるんだろう。
 喧嘩ばかりしてるような人だったから、何か大きな怪我をしたのかもしれない。そもそも部屋にいないかもしれないし、どこか外で倒れていたらもっとわからない。

「どうしよう…どうしよう緑君…っ」

 返そうと思って持って来ていた緋色の学ランをぎゅっと握りしめた。