盤面が黒でも白でもなく同じくらいに埋まって行く。
 たまに緑君の持つ白が多くなっているように見える事もあった。

 テーブルを挟んでソファに座り向かい合う二人の間で、私は床に座ってそれを見ていた。

 頭の悪い私にはどっちが勝っているのかもどうして今緋色の手が止まっているのかも全然わからず。真剣にやっているのかと思えばなんとなく話し掛ける事も出来ず。手元の飲み物を、音を立てないように静かに飲んでいた。

「えー…まじで?」

 緋色が置いた黒が何枚かをひっくり返せば緑君は不服そうな声を漏らした。
 慌てて盤面を見たけど、まだまだ緑君の白の方が多いように見えたのだけれど。

「…緑君が、負けてるの?」

 首傾げ尋ねれば緑君はぶーっと口を尖らせて。

「負けてるの」

 言う。でも白の方が多いのに。

「…オセロは途中が多くても少なくても、最後に多い方が勝ちさね。このまま緑が勝つのはなかなか辛い気がするさ」

 説明のように言ってもらっても全然わからない。
 私はますますハテナな顔をした。

「やっぱ無理これ。無理だよね。こっち打って、こう来て…あー…いや、じゃぁこっちに打ってさ」

 緑君はぶつぶつ言いながら考察を始めたけれど、そのどれも緋色は口元楽しそうに見えているだけで。しばらくたった頃に一言「あきらめるといいさ」とだけ言って緑君に続きをうながした。

「あー!!もう」

 緑君はあきらめたように適当なところにぽんっと置いて。
 そこからはトントンと進んで行って気が付いたら緑君の白は5枚しか残らず、盤面は黒く染まった。

「今日は俺の勝ちさね」

 満足そうに笑う緋色の向かいで、緑君ががっくり肩を落とした。

「…二人はよく、オセロやってるの?」

 こんな時に間抜けな質問だなと思いながら。

「そうさね、緑とは昔からやってるさね。勝率も半々ぐらいな気がするっけ、どっちが強いってわけでもないからやってて楽しいさね」

「嘘つけよ!だいたい緋色が勝ってんじゃん!」

「そうでもないさ、前回は緑が勝ってたさね」

「そうだけどさ!」

 仲の良い二人のやり取りに、少しだけ、興味がわいた。