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あの悲劇の夜から1ヶ月がたち私は村をあとにした。
村の妖を、私の大切な仲間の命を奪った人間に仇を討つため私は旅に出たのだ…もちろん悪いことだということはわかっていたし令狐も私を止めてくれた。
だけど…
あの人間を殺さなければ心の傷は一生悪夢となって消えないような気がしたのだ…
令狐それをわかってくれた。そして令狐は言った
「絶対に無理はしないで!あなたまで死んでしまったら私はとうとう一人ぼっちになってしまう…約束して!仇を討ったら絶対にまたこの場所に帰ってくると!」
私は約束をして村を出た。

・・・

旅に出てから長い時が流れやっとあの人間を見つけることができた。
やっとあいつに仇を討てると思った。
しかし…
その人間はもうこの世にいなかった。
人間の寿命は妖よりもはるかに短い、村の妖をたくさん殺したあいつは流行りの病であっけなく死んだと、近くの森に住む妖に聞いた。
葬式ではあいつの息子と見られる男が涙を流して亡くなった父の元をはなれようとしなかったという。
あの人間を自らの手で殺してやれば少しは楽になれただろうか?
いいや…もう答えはわかっていた。
あの人間を殺したところで私の心の傷は癒たりはしない、まして深まる一方だったかもしれない。
あいつの息子の涙を直接見た訳ではないが、あの日の私と同じ大切な人を失った悲しみの涙だということはわかっていた。
もし私があいつを殺したら、私は息子にとって仇を討つべき存在になっていたかもしれない…今更ではあるが気づくことができてよかったと思った。
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