鍋パーティーが終わって
片付けを済ませると、シュシュは
ベッドの上でスースー寝息をたてていた

(はしゃいでお腹いっぱいだしね 眠くなるか)

太陽はシュシュに毛布をかけた
そして温かいお茶を入れてテーブルにならべた

「すまんのーお茶まで」

「いいよ ゆっくりしてって」

そのお茶を一口飲んで、じろりとまた睨んだ

「おいジジイ お前なに者だ シュシュは一体何なんだ 教えろ」

「…この兄ちゃんうるさいのぉ」

「俺も聞きたいんだ」
(初対面なのに海斗睨みすぎだよ はははっ)

老人はずずっとお茶を飲んで
ふぅと息を吐いた

「わしの名前はジジ 見たとおりの商人じゃ」

太、海(イ付けたら ジジイだ)

「えっとージジ シュシュって一体何なのかな 聖なる泉がないと生きていけないとか条件あったりするのかな?」

太陽の問いかけに考え込んで
不思議な長い腕をクネクネとさせた

「聖なる泉とかじゃないけどー 何もなくても生きていけるけどー うーん」

「んだよ なんかあんのかよ?」

「シュシュはゴッドマザーから生まれた種なんじゃよ」

太、海「ゴッドマザー?」

ふむとゆっくり頷いた

「七色の花びらを持つ、大きな花の姿の女神じゃよ そりゃ美しくて妖精の国を守っておられる」

「え…?」(もしかして前に夢で見た?)

太陽の頭によぎったのは以前見たあの夢
娘をよろしくと言われたあの優しい声

「娘をよろしくって… シュシュはゴッドマザーの種ってこと?」

「んじゃ そういうことになるじゃ」

不思議そうに首を傾げて

「なんでその偉い守護神みたいな花の種をお前が持ってんだジジイ」

「ジジイじゃなくてジジじゃ!!」

「同じようなもんだろ!!」

間にはいって
太陽は睨めっこしている2人を引き離す
こほんと咳をして

「頼まれたのじゃ マザーに 人間界へ種を持って行って 妖精の信じる人間に渡すように」

「たのまれたぁ?」

「妖精の国では最近、妖精を信じる人間が少なくなったせいでマザーが弱られて… 種が妖精にならなくなってしまったのじゃ」

悲しげな姿に2人は静かに見つめた
二人はその話に耳を貸した

「それでマザーが妖精を信じる
清い心の人間に この種を育ててもらうようにと」

「どうしてその種を託すのが人間なの?」

「それはの 昔から人間の信じる力には凄まじいエネルギーがあるとされているんじゃよ」

腕を組んでふむと頷く2人

「そのエネルギーとやらで 妖精が生まれるってか… 
んでよ なんで種を妖精にする必要があんだよ」

「それは 新しい次の女神を生み出して
共に妖精の国を守ってもらうためなのじゃマザーお一人では力が足りないようじゃよ」

そう言ってジジは溜め息をついた
その背中をさすって

「ゴッドマザーの力が足りないと 美しい国を保てないんだね?そして滅びてしまうんだな うん」

「なんと!その通りなのじゃよ 太陽の兄ちゃんはカンがいいの!」

(え!!太陽お前 空想マスターになってるじゃねぇかよ!!)

親友の空想力に思わず感心してしまい
目を丸くした

「そうかそうか 大体わかったぞ うん」

「そして…マザーから生まれた妖精は 
いわばマザーと繋がっている。
シュシュが楽しく生き生きしていれば
その溢れるエネルギーがマザーに届くのじゃ」

「ほーん まぁ種から妖精にして そいつのエネルギーも貰えたら 守護神は助かるだろうな」

感心したように海斗はジジを見た
しかしその様子は落ち込んでいる
ますます背中が丸まった

「…もし誰も妖精を信じなければ
マザーは消えてしまう… 
そうなればこの子も消えてしまうんじゃ」

太、海「!!?」

「二人は繋がっているからの 力の大きなマザーが消えれば この子も消える」

太陽の表情は一瞬不穏に包まれた
しかしすぐにいつものように微笑んで

「わかった 大丈夫ジジ 俺は絶対信じてるし ゴッドマザーを消させやしないよ」

その優しげな、けれども何か強い決心を抱いた表情だった

「シュシュだって消させやしない」

その様子を静かに親友は見つめていた

(太陽… どこまでも優しすぎるやつだお前は)

わざとらしい咳をして

「まぁ…俺も信じてるから大丈夫だぜ」

と大声で言った

(海斗… 信じてたのかよ はは)

親友同士は目を合わせてにっこり笑った
感動したようにふるふると手を二人に差し伸べる

「おおおお 優しいじゃあー!ありがとう人間の兄ちゃん達~!」

感謝する妖精の言葉は何度も繰り返された
しかし海斗の表情はみるみると鋭い目つきとなる

「んでもよ お前 そんな使命もって大事なもん託されて 商売で売ってたのか?」

「ギクッ!!!!」

あからさまに痛い所をつかれたような態度に、さらに睨みは強くなる

「てんめぇ~ 聖なる使命をもった使者が金儲けすなぼけぇ!!」

「ひぃええええ! すまんじゃあ!
お金貯めて欲しいものあるしー! 
あと最初から、わしの事見える、
妖精信じてる人に渡そうと思ってたからぁ!!」

(妖精もお金貯めて何か買うんだ…)

小さな妖精の頭を掴んでいる荒っぽい手をどかして 

「なるほど もしかして妖精って信じてないと見えないの?」

「当然じゃよー ここにいる二人は見えてるようじゃけど そうそうおらんのじゃ」

「え!まじかよ ってことはシュシュもか?」

「もちろんじゃ!」

二人は顔を合わせてハイタッチをした

「なんだよ シュシュも外いけんじゃんかよ!」

「シュシュ 喜ぶぞ!やった!」

(ううう 掴まれた頭が… 形かわってしまうじゃあ…)