幻ー消えない追憶ー



無機質な部屋の丸い机に乗った時計の音が
何もなかったように鳴り響く。
「朝だよ!早く起きないと遅刻するわよ!」
という母の声。


昨夜は眠れなかった…。


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先生が背中を向けチョークを黒板にリズム良く走らせる。
何となく暇だなーと思い、ふと横を見た。

すると窓の向こうに見覚えのある姿があった。
それは珍しく楽しそうにサッカーをしている日向だった。


味方にパスをして走っていく。
そしてまたボールが戻ってきた。
うまく敵を交わし、勢いをつけて思いっきりシュート。
日向の蹴ったボールはクルクルと転がり、綺麗にゴールへ入った。


…やるじゃん。
正直に言うと、サッカーをしている時は誰よりも輝いていてかっこよかった。
あれで性格も良ければすごくモテるのに。
もったいない。

日向ってスポーツ出来たんだ。
昔は体育の時は必ず見学していたから、てっきり運動神経が悪いのだとばかり思っていた。
あんなにスポーツが出来るとは知らなかった。

すると日向がこっちの方を向いた。
口がパクパク動いている。
何か私に伝えようとしているのだろうか。

私はそれを読み取ろうと必死に目を凝らした。

最初にニーッと笑ったような口をした。
舌を少し巻いて口を丸く開けて、またさっきの形に戻った。そしてまた口を丸くして…。

じ…ろ…じろ…み…ん…な…?

じっジロジロなんて見てないよ!
少しカッコイイと思ってただけじゃん!
本当に、
違うんだよ!!

慌てて口をパクパクさせる私をしばらく見て、すぐに何処かへ行ってしまった。