脳なしの、ろくでなし。
図体しか取り柄がない。
それでも、こんな奴でも、生きていれば何かあるはずだ。


その何かを、一緒に見てやりたかった。


「なぁ、タカヤ」


沼田は、また、タカヤの頭を撫でた。


「わかったから、離せ。捨てやしねぇから。な?」


沼田の言葉に、タカヤが、しぶしぶ身体を離す。


「ほんとうに?」
「俺が嘘を言ったことがあったか?」


タカヤが、ふるふると首を横に振る。


嘘つけ。


内心、沼田は苦笑した。
自分がタカヤに示したことなど、いつでも嘘と、まがいものばかりだった。


沼田は立ち上がって、部屋に戻った。
とぼとぼと、タカヤがその後をついてくる。


「な、タカヤ」
ソファに腰掛けて、沼田はタカヤを見上げた。


「おめぇ、今から病院に戻れ」