「フミ、二コル、ごめんーーー!!」

ママが下から何か叫んでいる。

 「急に仕事呼び出されたから、
  悪いけど、ふたりでご飯しておいて」

ママは、翻訳の仕事をしていて、普段は
家で仕事ができるんだけど、時々急ぎの
件があると、オフィスに行かなければ
ならない。

 「行ってきまーす!!」

ママの存在がいなくなっただけで、
私は急に緊張してしまう。

 二コルは疲れたといって、すでに
ベットに横になっているし、
男の子とふたりきりでこんな風に
一緒にいるなんて、いとこの良輔くらいで
それも、もうここ1年くらいは会っていない。

 「おなかすいたなー、フミちゃん」

下に行こうと立ちあがったまま振り返ると
二コルの顔を見下ろす形になって、
かれに長いまつげがあることを知った。