今自分の立っている場所は本当にネモフィラと空しか視界には入らない。

だから、ゴールデンウィーク明けの平日の午後、人が殆どいくなくて、太陽が真上に来ている昼頃で、雲ひとつない快晴の日だと、青以外は何も視界には入ってこないというわけ。



そこで暫く綺麗な青に見とれていた時、


カシャという、機械音。



シャッターの音だ、と思って、
音のなった真後ろに顔を向けると、


男子並みに髪の毛の短い、顔のちっちゃい女の人が
大きなカメラで写真を撮っていた。


「あ、ごめんね。嫌だった?」

と、優しげな声色でその人は喋った。


自分じゃなかったら恥ずかしいのできょろきょろと回りを見渡すが、もちろんだれもいない。


「あはは!君だよ君!
高校二年生って感じの君!」


どうして歳までわかったんだろう。
そう言われてから、彼女の立ち位置的に写真を撮られたことを理解した。



「君、凄くいい場所知ってるね。わたしも同じ高校だったから懐かしくて近付いたら、綺麗な構図で思わず撮っちゃった。名前は?あ、私は夕(ゆう)。夕陽の夕。」


夕さん。いいな、素敵な名前だな。と思った。