「え、陽菜にもそんな感じなんだ。アイツ。おせっかいかもしれないけど、大丈夫なの?」


大丈夫なのっていうのは、付き合っているのにそんな感じで大丈夫なのかってことだろう。



「うーん、わかんないや。もともとわたしが好きで基樹がいいよって了承したって感じだから、あんまり基樹の気持ちを確認したことないんだよね。期待した答えは帰ってこない気がして。」


「なるほどね。まあ陽菜も無理はしないで、相談したいこととかあればいつでも連絡してよ。」


「うん、ありがとう。」



「基樹も悪いやつじゃないからさ、今は何か変だけどさ。アイツ前も一回心ここにあらずみたいなときあったけど、
しばらくしたらもとに戻ったし、大丈夫だと思うよ。むしろ二人の仲の方が心配だわ。」


と、宇津木くんは気を使って笑わせてくれた。


「陽菜は部活だろ?じゃ、頑張って。」



「うん、バイバイ。」



そう言って廊下を、恐らく帰宅するのであろう、下駄箱へ向かう宇津木くんとは逆方向の、音楽室へ向かってこつこつと歩き出す。