彼女はその病のせいで、去年卒業式をする日と手術の日が被ってしまったらしい。

学校側は卒業式に出られなかったから卒業出来ない訳ではないので、卒業という形にすると言ってくれたそうだが、
彼女はそれを拒否。



「どうして拒否したんですか?」


と聞くと、




「目標。目標にしたの。来年の卒業式にでる。
それで、卒業証書をもらって学校を卒業する。
それが、わたしの将来の夢。」



意思のある強い目を真っ直ぐ、もう緑と青の混じり合うネモフィラの花畑に向けて
彼女は言った。

あの目を忘れることは絶対にない。
それくらいきれいに輝いていた。


それに比べて、きっと僕の目は淀んでいただろう。

自分が今まで聞いたなかで、恐らく一番クリアで、あまりにも近い将来の夢。それが彼女には果てしなく遠い夢なのだろうか。



「じゃあステージは、、、」



「Ⅳだよ。ステージⅣ。先生が言うには3~4ヶ月だって。でも、過ごし方によっては宣告された期間よりも長く生きる人もいるし、不可能ではないと思う。丁度いい目標だと思ったの。」


淡々と、大したことのないように、彼女は語った。