【愛美side】


「今日のHRは以上、解散!」



担任のその声で一気に騒がしくなる教室。
私はここ急いでカバンを持ち教室を出る。


別に、いじめられているとか学校がつまらないとかそんなんじゃない。


「キャーーー!翔くんかっこいい!」


聞こえてくる黄色い声は、隣のクラスの廊下から。

声を発している女の子たちの視線の先は、
一人の男子。


名前なんて、知らない。
顔だってちゃんと見たことないし。

うろ覚えってだけ。




放課後はいつもそう。

同級生から先輩後輩まで2年生の校舎、
このクラスの前に集まって彼を待つ。



だけど私は別。

向かってくる女の子たちとは真逆の方向を歩く。


嫌なくらいにうるさい歓声が嫌で、お気に入りのピンクのイヤホンを耳に突っ込んだ。




「はぁ…」




校舎を出たところで、
人がまばらにいる、グラウンドを歩きながらため息をつく。


そんなため息さえも、その歓声にかき消された。