ガラガラ。まるでタイミングを図ってたように翔君が教室に入ってきた。

「うっす雅也!」

私には声をかけてくれない。私の胸は激しく締め付けられる。

「翔?お前、水城 桜花からの告白は……どうだったんだよ」

「あれ…何で雅也がそんなこと知ってんだよ」

「いいから答えろ!!」

ガタンと椅子から立ち上がり雅也くんは翔くんを壁にたたき付けた。

「別にお前には関係ないだろ?」

冷たい目で翔くんは私たち二人を睨み付ける。
こんな翔君…初めて見た…。

「別に俺が誰と付き合おうが勝手だろ?」

「そういう問題じゃないんだよ!!」

「つかお前ら二人で朝からイチャイチャしてんのすげー不愉快なんだけど」

翔君は私と雅也君を指差して言い放った。

「さっさと離せよ」

翔君のその迫力に雅也君はたじろいでいた。

「翔?雅也?お前ら何してんだよ!!」

渡君が駆け付けてきて雅也君と翔君を離した。

「何があった?」

「別に……。そこのカップルに聞いたら?」

翔君は冷たい目で私と雅也君を見下ろしてから、教室から出ていった。

ドアが閉まると同時に
私の目からはこらえていた涙が零れ落ちた。

何で……?翔君……。

すれ違い間際にあなたが言った一言はどういう意味なの……? 

『幸せになってね』

「ちょっと、百合菜!大丈夫?」

静香が私の所に来てくれる。

「静香ぁ……!」

「分かった分かった。百合菜、保健室行こう?」

「うん……」

静香は私の肩を持ってくれる。

「雅也、百合菜保健室にいるって先生に言っといて?」

「百合菜、任したからな」

静香は雅也君の言葉に頷くと、私に合わせて、ゆっくりゆっくり歩いてくれた。