百合菜ちゃんの話をまとめるとこうだ。

ある日ラブちゃんは一人で散歩をしていた。その途中に、たまたまここの病院の前を通ったらしい。すると車椅子のおじいちゃんがラブちゃんに会った。

この車椅子のおじいちゃんは、妻に先に旅立たれ悲しんでいる内に、自らも調子が悪くなっていったのだという。

このおじいちゃんの家族は別の町に住んでいて、なかなか会えない。

その淋しさを晴らそうとラブちゃんと、じゃれていたのだという。

看護師さんによると、ラブちゃんと遊んでいる時のおじいちゃんは、とても生き生きとしていたというのだ。

一人で散歩をしていたのが災いしてか、病院側も野良犬だと思ったらしく病院の入り口に犬小屋を建てて飼うことにした。

「ってわけなの……」

百合菜ちゃんの話は終わった。なるほど。だから一ヶ月百合菜ちゃんが探しても見つからなかったのか。

まさか病院にいるとは考えもしなかっただろう。

「でも何で百合菜の家に帰らなかったんでしょうね?」

美紀が疑問を口にする。

「ペットは持ち主に似るって言うじゃろ?そこの優しそうなお嬢ちゃんが飼い主なら、ペットもまた優しいに違いない。きっと先が長くないワシを気遣ったのじゃろう」

「先が長くないって…」

静香は絶句した。

静香だけじゃない。みんなが驚いて、おじいさんを見ていた。